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 そしてアーティミドアはステローペの家に行った。ステローペは「アーティー。朝より気分いいよ。洗濯物干してくれるかな」と言った。するとアーティミドアは洗濯物を干し始めた。ブラジャーをハンガーにかけた時、ステローペが起きて来て「うちは洋服屋じゃない」と言って、ブラジャーの紐の端を洗濯バサミに挟んで干し直した。アーティミドアは料理の本を開いた。するとヘビの頭を焼いてヘビの首を茹でてヘビの胸を揚げてヘビのおなかを刺身にしてヘビの腰を燻してヘビの尻尾を蒸して・・・・、と書いてあった。するとステローペが「ぼくヘビ嫌いだよ!」と言った。それから「ぼくがチーズを切ろうとした時、ナイフが折れちゃったんで、今料理が作れないんだ」と言った。するとアーティミドアは、鞄からナイフを出して、彼女に渡した。ステローペは「アーティー。病院まで連れてってくれる?」と言った。そして二人は家を出た。病院に行く途中、ステローペはアーティミドアの胸に触った。するとアーティミドアは彼女の手首を掴んで、胸から剥がした。ステローペは「あんた男なのに女らしいよ。どうしてそうなったの」と言った。アーティミドアは「中学生の時から胸触ると痛かったわ。そして高校生の時に膨らみ始めたの。私は男なんだけど、胸が大きくなるほど、性格的に明るくなったと思うわ。こんなのって変かしら?」と言った。アーティミドアはそう言ったが、事実はそうではなくて、高校時代に、ホルモンを郵便局留めで、通販で買い始めたのが真相である。ステローペは「あんたがいいならそれでいいよ」と言った。それから彼女は「学生時代に楽しい事はあった?」と言った。するとアーティミドアは「高校生の時、イエスの生涯という劇をしたわ。私は天使と悪魔の二役をやったの。最初は天使の衣装を着てマリア様に受胎告知をして、次は悪魔の衣装を着てイエス様を誘惑して、次は悪魔の衣装でユダの耳元で何かをささやく恰好をして、最後は天使の衣装でイエスのお墓に来た女の人達に話したわ。ラストシーンでは、大道具係がイエス様をクレーンで吊り上げたんだけど、その時にイエス様がくるくる回ったんで、見ていた人たちは笑ってたわ」と言った。そして二人は病院に着いた。ステローペが診察を終えると、二人はまたステローペの家に向かった。ステローペは「あんた女の恰好しているけど、女の人嫌いなの? 男が嫌なの?」と言った。アーティミドアは何かを言おうとしたが、その時犬が二本足で歩いて来た。ステローペは喜んで「あいつ握手出来るかな」と言って、犬の前足を掴んだ。そして振り向くと、アーティミドアは塀の上に立っていた。ステローペは「どうしたの。この犬尻尾ふってるから噛まないよ。来なさいよ」と言った。アーティミドアは、恐る恐る塀から下りて来て、犬の前足を掴んだ。その時犬が吠えた。するとアーティミドアはステローペの後ろに隠れた。それから二人は犬と別れて、ステローペの住宅がある通りに来た。それからアーティミードアは、彼女と別れてホテルに戻った。