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 その夜、三人はホテルに泊まった。オリオンが「黒パンってどうやって作るんだ」と言った。するとアーティミドアは、母親のダイアナに電話をかけて、ドイツ語を喋り始めた。そして電話を切ると「お母さんは英語を知らないのよ」と言った。オリオンは「お前の母ちゃんはドイツ語を話すのか。月の公用語は英語だろ」と言った。アーティミドアは「私は英語もドイツ語も分かるけど、お母さんはドイツ語しか話せないわ」と言った。ステローペはアーティミドアに「あんたドイツ人とラテン系の両方ににてるよ」と言った。するとアーティミドアは「たぶん私のお父さんはスペイン人だわ。お母さんは結婚はしてないわ。たしか10月ごろにスペインに行ってから、月に帰って来て、次の年の7月21日に私を産んだの」と言った。するとステローペは「ぼくの誕生日は5月23日だよ」と言った。そしてオリオンが「俺の誕生日は8月7日だ」と言って、刺身を作ってステローペにあげた。ステローペはエビサラダを作ってアーティミドアにあげた。アーティミドアはシシカバブを作ってオリオンにあげた。アーティミドアは「私豚は嫌いだわ」と言い、オリオンも「おれも豚嫌いだな」と言った。するとステローペが「豚肉って美味しいじゃないの。あんた達ユダヤ人なの」と言った。アーティミドアは「私エビは大好きよ。ユダヤ人はエビ食べないじゃないの。生きてる豚を見てたらまずそうでしょ」と言った。オリオンは「俺はイラク人じゃないし。やつらはイスラムだから豚は食べないだろ」と言った。するとステローペは「ぼくが会ったイラク人は皆クリスチャンだったよ」と言った。