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 その夜、アーティミドアはダイアナに電話をした。アーティミドアが口笛を吹いたら、ダイアナは「ウグイスみたいね」と言った。その翌日、オタマジャクシ達の足は、さらに長く太くなっていた。アーティミドアは「オタマジャクシは、カエルになるわ。どのあたりがカエルとオタマジャクシの境目かしら」と独り言を言った。翌日、オタマジャクシ達は、左腕を生やしていた。その時、一匹のオタマジャクシが、左腕を生やしたので、アーティミドアは驚いた。そしてオリオンの家に行った。するとオリオンは「オタマジャクシの腕と脚は、全部同時に育つんだ。足は体の外で育つけど、腕は体の中で育つんだ。体の左側に、鰓の穴があるので、左腕が先に、その穴から出るんだ」と言った。アーティミドアがホテルに戻った時、何匹かのオタマジャクシは右腕も生やしていた。そして翌日、全てのオタマジャクシが、右腕も生やして死んでいた。それからアーティミドアは、オリオンの家に行った。そして彼の顔を見るなり泣き出した。アーティミドアが説明し終わると、オリオンは「たぶん溺れて死んだんだろう。オタマジャクシは足と腕が生えると、鰓呼吸から肺呼吸に変わるんだ。水槽の中に、陸地を作っとけば良かったんだな。新しいオタマジャクシを捕まえに行こうか」と言った。するとアーティミドアは首をふって、また泣き出した。オリオンはそんなアーティミドアを車に引っ張り込むと、出発した。二人は山に着くと、車から下りて、登り始めた。そして川のそばに来た時、動物の鳴き声が聞こえていた。オリオンは「カジカガエルが鳴いてるな」と言った。カジカガエルは、セイレーンのような、美しい声で鳴く。アーティミドアは、カエルの図鑑を見ると「なんて不細工なカエルなのかしら! 灰色で痩せててごつごつしてるわ! でも声はすごくきれいだわ!」と叫んだ。それから続けて「ヒキガエルも不細工な割に、声は可愛いわ」と言った。それから二人はまた車に乗って出発した。オリオンはフランス語で「カエル(グルヌイユ)はラーメン(ヌイユ)を食べるんだよ」と言った。するとアーティミドアはフランス語で「それじゃあラーメンが作られる前は何を食べてたの」と言った。オリオンは「冗談だ。オタマジャクシは水草を食べてて、カエルは昆虫を食べるんだ。『動くものなら何でも食べる』はイエスであり、ノーでもある。動くものは何でも食べるが、食べられないものだと吐き出すんだ」と言った。そして車はホテル・イスカンダリアに着いた。そしてアーティミドアは車から下りた。