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 ある日、アーティミードアは、湖のそばを通った。その時、トノサマガエルたちが、バリトンの声で鳴いていた。それからホテル・イスカンダリアに戻ると、トノサマガエルの鳴き声を楽譜に書き取った。それからステローペがアーティミドアの部屋に来て「今晩泊めてくれる?」と言った。アーティミドアは驚いて「やめてよ私レズの趣味は無いわ!」と言った。すると彼女は「・・・いや、ただの冗談よ」と言って、帰って行った。しばらくしてから、アーティミドアは、彼女の様子がおかしかったと気づいて、バビロン住宅街に行った。するとそこには、沢山の警察官がいた。彼らは「ホテル・ディンギルが爆発したので、捜索中だ」と言っていた。アーティミドアは、一人の女性に「ステローペ・デダイフさんがどこにいるか知ってますか」と聞いた。すると彼女はアラビア語で「アナー・シファー。ラー・アアリフ・アッ・ラガー・リンキラーズィッヤー・アッ・サー・キター!」(ごめんなさい。私英語は分からないわ)と言った。そこでアーティミドアは「ハル・アンティ・ヤアラフィーナ・ステローペ・デ=ダイフ」(ステローペ・デダイフさんがどこにいるか知ってますか)と言った。すると若い女性が来て「ラー・アスタティーウ・アン・アフハマー・アラビーヤキ・ハル・タスヤティーウ・アン・トゥカッラミーナ。リンキリーズィーヤー」(貴女のアラビア語は分かりにくいわ。英語は話しますか)と言った。アーティミドアは「ナアム、カッラムトゥ」(はい、話せます)と言った。それから彼女は「ステローペには、ユース・ホステル・ウルクで会ったわ」と言った。そしてアーティミドアは、ユース・ホステル・ウルクに行った。そこは、ホテル・ディンギルよりも、ステローペの住宅に近かった。アーティミドアがそこに来た時、天井が屑崩れて落ちて来たが、それらの瓦礫は幸いにも、アーティミドアには当たらなかった。それから、気を失っている女性と、赤ん坊を見て、駆け寄った。その時、赤ん坊がドイツ語で「お嬢さん。倒れている人を、1メートル東に引きずってくれますか。そこが安全でございます」と言った。するとアーティミドアは、気絶している女性を、赤ん坊の言う通りに引きずった。それから赤ん坊は「我々ももう一つの安全な場所に行きましょう。そこは南の方にある」と言った。そこでアーティミドアは、赤ん坊を抱き上げると、南の方に歩き始めた。やがて赤ん坊は「止まれ。ここが安全だ」と言った。そこでアーティミドアは止まって、赤ん坊に「こんにちは。赤ちゃん。あなたが喋った時、お母さんはびっくりしなかったかしら」と言った。すると赤ん坊は「私は普段は喋らない。私は普通の赤子のふりをしている。今、私は天才だけど、数か月の後に、普通の赤子になるであろう。そして次に私が目を覚ました時は、普通の子供になっていて、あなたの事は覚えていないであろう」と言った。アーティミドアは「あなたドイツ語がお上手ね。だけどあなたはどう見てもイラク人のように見えるわ」と言った。すると赤ん坊は「いかにも私はイラク人である。私の名はゴレイグだ。あなたがドイツ語を一番よく喋れるので、私はドイツ語を話している。次に揺れた時に、一気に東に走るが良い」と言った。アーティミドアは、ゴレイグを再び抱き上げて、立ち上がった。そして地響きが聞こえた時に、一気に東側の壁に向かって走った。すると同時に、その壁が崩れた。そして二人は外に出た。そしてユース・ホステル・ウルクは一階が崩れて、二階が地面に落ちた。そしてティミドアは、警察官に、ゴレイグを渡して「中に人が一人いるわ」と言った。