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 その翌日の八月二日、マトゥサラは新聞を読んだ。それにはこう書かれていた。黄金の惑星、メティデスが消失したために、占星術師のサイデレオスとトロピコスが十二星座占星術に移行した。サイデレオスは天文学者が使っている十二星座を使うと出張しているが、トロピコスは春分点をおひつじ座の原点とするべきと出張している。両者とも、十二星座が三十度ずつである点では同じである。現実の世界の天文学者春分点黄道座標の原点としているが、マトゥサラがいる世界の天文学者はスピカより176度40分西の点を、黄道座標の原点としている。マトゥサラは、彼女自身のホロスコープ を思い出しながら、テーブルの上にいるシャアに「私は十四星座占星術ではしし座産まれ、サイデリアル占星術でもしし座産まれ、だけどトロピカル占星術ではかに座生まれになるの」と言った。その時バトラーチェが「猫に言葉が分かるわけ無いだろ」と口を挟んだ。マトゥサラはバトラーチェに「それじゃあなたには分かるの」と言った。するとバトラーチェは「お前の話は難し過ぎだ!」と言った。それから彼は、シャアの尻尾を引っ張った。するとシャアがバトラーチェを引っ掻いた。バトラーチェは「南斗水鳥拳!」と叫んだ。マトゥサラは笑うと「猫の尻尾は引っ張っちゃだめよ」と言った。それからマトゥサラは新聞の記事を見つけた。それにはこう書かれていた。「創世記第五十一章 発見される! それは七つの断片に分割されていて、七つの博物館に展示される」と。その時彼女は「全ての断片が一カ所に展示されてたらいいんだけど」と独り言を言った。それからバトラーチェに「行くよ」と言って、立ち上がると歩き始めた。そしてバトラーチェは彼女に続いた。マトゥサラはドアに鍵をかけたが、猫専用の小さいドアには鍵をかけずに「シャアは半野良猫だから、餌は自分で獲るわ」と言った。そして二人は出発した。