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 二人は駅に来た。その時、電車が出る直前だったので、マトゥサラは全速力で走って電車に駆け込んだ。そしてドアが閉まり、電車が動き始めた。そして座って周りを見回したら、彼女は一人だけだった。その時、バトラーチェが電車の外にへばりついて、窓を叩いていた。そこでマトゥサラは窓を開けて、バトラーチェを電車の中に引き込んだ。それからマトゥサラは本を出して読み始めた。それはアンデルセンの『人魚姫』だった。その時バトラーチェが「それ読んでくれる?」と言った。するとマトゥサラは「いいよ。本をよく読む人は偉人になれるの。聞きなさい」と言った。そして彼女は声を出して読み始めたが、デンマーク語は少ししか知らないので、彼女自身の創作も加えた。
 「昔々、ある所に・・・」
彼女は窓の外を流し目で見た。その時、窓の外では牛の乳を絞っている娘がいた。そこで彼女は「・・・人魚姫がウミウシの乳を絞っていた・・・」と言った。バトラーチェがマトゥサラに「人魚姫は人間に変えられるんだろ。その時海の中で溺れ ないのか?」と言った。マトゥサラは「大丈夫よ。陸に上がってから人間になるから」と言った。そして再び続きを読み始めた。
 読み終わった時、バトラーチェが「こうして、人魚姫は風呂の泡 になって、毎日王子様にまとわりついてます。めでたしめでたし」と言った。そして二人は大笑いをした。そしてマトゥサラは「何言ってるの!?」と言って、バトラーチェに跳びかかった。同時にバトラーチェが逃げた。そして二人は追いかけっこを始めた。やがて電車が終点に着いたので、二人は電車を降りた。マトゥサラは「馬になれ」と言った。するとバトラーチェは赤い馬に変身して「シャア専用馬は通常の三倍速く走る」と言って、彼女を背に乗せるとカエルのように跳び 始めた。その時マトゥサラは「馬らしく走れ」と言ったが、バトラーチェは「出来ないよ! そもそもおらは元々走れないんだ!」と言った。マトゥサラは「確かにカエルは走れないわ。だけどあなたは今馬なのよ。馬のように走れるはずだわ」と言った。バトラーチェは「だけとおらは馬の走り方を知らない! でも人間みたいには走れる!」と言うと、二本足で立って、人間の様な格好で走り 始めた。マトゥサラは必死で馬の首にしがみついていた。しばらくして、二人はイクテュス・タウンに来て、フィッシュ・アイという旅館に泊まった。マトゥサラは旅館の中でネズミを捕まえるとバトラーチェにあげた。するとバトラーチェは「おらはネズミよりハエ好きだ。猫じゃないから」と言った。するとマトゥサラは「あなたには好き嫌いが多いわ」と言った。その夜、バトラーチェは旅館中のハエを全部捕まえて、フライにして食べた。その時旅館の人は、ハエがいなくなったので喜んだが、マトゥサラは吐き気を催して怒った。彼女は「ハエはとても汚いからもう二度と食べちゃ駄目!」と言った。
 その翌日の八月三日、二人はフィッシュ・アイを出た。一匹の犬が、路上に糞をした。すると車が犬を糞を轢いて行った。すると犬が激しく吠えて、その車の後を追って行った。その時バトラーチェが「あの犬は、よくも俺のウンコを轢きやがったな、と言ってるよ」と言った。するとマトゥサラはその場にへなへなと崩れ落ちた。そして二人はイクテュス・タウンを出て、山の麓に来た。マトゥサラはバトラーチェに「豹になれ」と言った。するとバトラーチェは豹に変身して、彼女を背に乗せて、山を駆け上がった。その時、岩が転がり落ちて来た。彼等はその岩を避けた。それから沢山の岩が転がり落ちて来た。彼等はそれらを避けながら、駆け上がって行った。そしてマトゥサラは、沢山のペンギンが山の頂上から岩を落としているのを見つけて「イワナゲペンギンだ! 高地に住んでいて、外敵が来ると岩を落とす習性があるわ。学名はjaculator petramよ」と言った。彼等は頂上に来ると、バトラーチェが巨大なペンギンに変身して、ペンギンの群に向かって歩き始めた。するとペンギンたちは動きを止めた。巨大なペンギンが片方の翼で顔を隠して再び顔を見せた。その時、それは悪魔のような恐ろしい顔に変わっていた。そして天に向かって吠えた。するとペンギンの群は、クモの子を散らすように逃げ出した。
 二人はフランスに来た。語学が苦手な民族が三つある。アメリカ人、フランス人、そして日本人。語学の得意な民族が三つある。オランダ人、フランス人、そしてイスラエル人。フランス人は、隠れ言語学者。彼等は旅行者の会話を何食わぬ顔をして聞いている。彼等は上品ぶったワルである。世界一の文学全集と博物事典は、フランスにある。そこでマトゥサラは図書館に行った。そして彼女は『イノゴ8世』という本をバトラーチェに渡した。なぜならカエルのロボットが出て来るからである。それは英語で書かれたので、若い人は読めなかった。それで一人のオタクが、十七人の同級生に仏語訳を頼んだ。そして十七日かかって翻訳した。
 八月六日、マトゥサラはイタリア語の前置詞をよく間違えるので、検問の人に「チェ・クァルクノ・クィ・ケ・パルラ・スパニョーロ?(スペイン語は話しますか)」と言った。しかし検問の人はスペイン語を知らなかったので、マトゥサラは再び「チェ・クァルクノ・クィ・ケ・パルラ・イングレゼ?(英語は話しますか)」と言った。そして彼等は英語で話し始めた。そしてイタリアに入国した。