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 そして二人は図書館に入った。マトゥサラは、ピサト・ピサ と呼ばれる紙を発見した。それはヘブライ語で「ピサの紙片」という意味である。ピサとはその町の名前であると同時に、ピュセー(自然)というギリシャ語のへブル文字表記でもあった。そしてピサトとは、ピサが合成語を作る時の形である。ピサト・ピサにはこう書かれている。
 この紙は、失われた一頁である。それはピサで発見された。(ラディノ語。それはへブル文字で書かれたスペイン語である。)
 汝、翼無くして飛んではならない。翼無くして飛んだなら、飛んだ高さと、汝の体重の二乗の積に等しい力で、地に打ちつけられねばならない。(ヘブライ語)
 その高さはエピタキュンセーで測られるべきである。しかしその高さが一エウピフトンを越えたなら、その高さの価を増やしてはならない。地に傷をつけないためである。一エウピプトンは、十七と、九十八分の五十三エピタキュンセーである。その速度は一ペセマトタコスである。一エウピプトンを、三と五百分の二百十九ヘレクで落ちなければならない。一ペセマトタコスは、四十一と三分の二バディスマトタコスである。汝、一フォノタコス以上の速度で飛んではならない。一フォノタコス以上の速度で飛んだ者は、汝自信と、その周囲が砕かれねばならない。しかし、安全圏の中の者は、砕かれなくてもよい。その安全圏は、円錐形である。その円錐形は、フォノタコスと球の半径の積に等しい長さの線の先端から、球の表面を通る接線によって描かれる。その円錐形の先端は、常に飛ぶ者の先端である。円錐形の外の者は、砕かれなくてはならない。一フォノタコスは、六と百分の八十七ペセマトタコスである。そして一ヘミガイオンは、一万千百三十一と五百七十三分の七十七エウピプトンである。(アラム語)
 マトゥサラは、それを一回り大きい紙に書き写すと、余白をヤワン語で埋めた。ヤワン語とは、ユダヤ人がへブル文字で書いたギリシャ語である。なぜならペテロ行伝がギリシャ語で書かれているからである。
 シモン・マグスが空を飛んでいた時、聖ペテロは言った。「神よ。彼は翼無くして飛んでおります。あなたはこう定められました。汝、翼無くして飛んではならない。もし翼無くして飛んだなら、飛んだ高さと体重の二乗の積に等しい力で地に打ちつけられなくてはならないと。彼は今、その決まりを破っております。どうか彼を裁いて下さい」と。するとシモン・マグスは落ちた。三と五百分の二百十九ヘレクは十一と五十分の二十三秒である。一ヘレクは三と三分の一秒である。(ヤワン語)
 マトゥサラは考えた。一カ月は二十九日と十二時間と四十四分と、二と六百二十五分の五百五十六秒ね。ローシュ・ハ=シャナーによると、二十九日と半日と、三分の二時間と、七百十二ヘレク、それは二十九日と十二時間と四十四分と、三と三分の一秒に等しいわ。古代ユダヤ人は、どうやってそれを知ったのかしらと。