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 しばらくして、バトラーチェは中を覗いた。その時、裸身のマトゥサラが一人の男と共にいた。彼女はバトラーチェに気付くと「あなた見ていたの!」と叫んだ。すると男が「彼は我らを見てないよ。被造物が我々を見てなお生きている事は出来ない」と言った。するとマトゥサラは、安心して服を着始めた。マトゥサラはバトラーチェに「彼はプロメテウスよ」と言った。プロメテウスは紙 を見てマトゥサラに「君の名前は暗号 だな。フロス・イアト・スメス・カドマイオスは、ファーストネームを分割せよ、という意味だ。そしてウサフ・イアト・オアウ・ベン・メム・ウタウは、そしてワウをメムとタウの間に入れろ、という意味だ。これらを実行すると、モト・サラ・エト・ハンマッブル・マイム・ガル・ハアレスという文が出来る。それは、彼の死は洪水を地にもたらす、という意味だ。ゼウスは君の名前が、人々に不安を与えないために、君を今の姿に変えたのだ」と言った。それからバトラーチェに「カエルさん。ようこそ。私があの蛇だ。私の名はプロメテウスだ。彼女が私を元の姿に戻してくれたのだ」と言った。そしてバトラーチェはプロメテウスに「ぼくは温泉ガエル。名はバトラーチェだ」と言った。プロメテウスは「食べ物は何が好きか」と言った。するとバトラーチェは、あらゆる種類の虫の名前を言った。するとプロメテウスはそれら料理し始めた。服を着たマトゥサラがそこに来た。プロメテウスは彼女を見るなりぎょっとして「アルテミスと同じ帯の締め方じゃないか! 私は彼女に蛇に変身させられたんだ! 下着まで彼女とお揃いだ!」と言った。それから彼は「済まない。君は人間のようだが、天界で育ったのか」と言った。マトゥサラは「産まれも育ちも地上よ。お父さんのガニュメデスが天界に引き上げられたの」と言った。それからプロメテウスはバトラーチェを見てマトゥサラに「君の僕は何人いるのか。この蛙だけか」と言った。マトゥサラは「最初は三人いたわ。この蛙と、ナメクジと蛇よ。だけどナメクジが蛇を食べて、それからこの蛙がそのナメクジを食べたのよ。そして私の僕は一人だけになったの」と言った。プロメテウスはバトラーチェに「ガラスの卵を見せてくれないか」と言った。するとバトラーチェが「アホぬかせ! そんな事したら死んじまう!」と叫んだ。マトゥサラは「切腹という物を、ぜひ見たいわ」と言った。プロメテウスは「それは言い過ぎだぞ」と言った。マトゥサラは「蛙は嫌いよ!」と言った。プロメテウスはバトラーチェに「ロボットに変身して、装甲板を開いても、君は死なないと思う」と言った。するとバトラーチェはロボットら変身して、胸を開いた。すると、ガラスの卵 が中に一つあった。その卵の中では、小さい王杓と小さい三つ又の矛が、糸に巻かれていた。プロメテウスは「この王杓はゼウスの物で、大雨を降らす。この三つ又の矛はポセイドンの物で、大波を起こす。そしてこの糸はモイラの物で、君の命を表わしている。君が死ぬ時、この糸が切れて、大雨と大波が地上に起こる」と言った。その時マトゥサラとバトラーチェは死んだふりをしていた。するとプロメテウスが「起きなさい! 君達の上に洪水が起こるぞ!」と言って、バケツを出した。そして二人は起き上がった。プロメテウスはマトゥサラに「君の命令で、洪水を起こす事も出来る。人の罪が天にまで達した時、君は洪水を起こしてよい」と言った。マトゥサラは「もし洪水が起こったら地上には何が起こりますか」と言った。プロメテウスは「その時。海面が六十七メートル上がる」と言った。マトゥサラは「人が地上に住んでいる限り、地球地中心説が正しいか、太陽中心説が正しいかは関係無いわ。だけど私は真実を知りたいの。私達はエノス書を信じているけど、沢山の学者達が、そのエノス書に反する新事実を主張しているのよ」と言って、記憶によって、エノス書を読み始めた。