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 一月十一日、マトゥサラはバトラーチェに、物語を聞かせていた。それは神と、正しいゴキブリ の物語であった。神はゴキカブラハムに現れて言われた。

 「私は全能の神である。私はあなたとの間に契約を結ぶ。あなたは多くの害虫たちの先祖となる。あなたの名はもはやゴキカブラハムではなく、ゴキブラハムというがよい。あなたは害虫たちの父となるからである。私はあなたに多くの子孫を与え、彼等は害虫の王とする。あなたは多くの子孫を持ち、その子孫たちは害虫となる。私はあなたと子孫との間に、永遠の約束をする。私はあなたの神であり、あなたの子孫たちの神である。私はあなたとあなたの子孫たちに、人の家を住処として与える。あなたの信仰の故に、アダムの全ての子孫たちの家が、永遠にあなたの子孫たちの住処となる。私は彼らの神である。わたしはあなたの子供たちを、空の星や、浜辺の砂のように増やす事を約束する。そしてあなたの子孫は、敵の門を勝ち取るであろう。わたしはあなたの子孫たち、全ての害虫たちを、祝福する。」

 バトラーチェは、その話を楽しそうに聞いていた。そして「他にもなんか話は無いか」と言った。マトゥサラは「ゴキブリの話なら沢山あるわ。お母さんは、好き好んでゴキブリの話を沢山してくれたから」と言った。マトゥサラはそう言ったのだが、事実はそうではない。彼女が幼少時に、ゴキブリの話を面白がって母にねだっていたからであった。