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 八月十四日、マトゥサラとバトラーチェはデルフォイに来た。アポロン神殿は、数本の柱が立っているだけであった。バトラーチェは「何でここ壊れてるんだ」と尋ねた。するとマトゥサラは答えた。「シュリーマンアポロンが喧嘩をしたからよ。シュリーマンが始めてギリシャに来た時、ギリシャ語を習うべきか否かを決められなかったの。それで彼はここに来たのよ。その時アポロンが現われて、ティ・エスティン・ゼーテーシス・スー と言ったの。ギリシャ語でご用件は何でしょうかと言う意味だけど、シュリーマンギリシャ語を学ぶべきでしょうかと言ったわ。するとアポロンは、ティ・レゲイ? ウーデン・カタランバノー・グローッサン・スー! ヘッレーニゼ! と怒鳴ったのよ。ギリシャ語で、何を言ってるんですか。全く解りません。ギリシャ語を話して下さいと言ったのね。するとシュリーマンは、何を言ってるんだ! と怒鳴ったの。するとアポロンはバルバレ! つまり野蛮人め! と叫んで祭壇から跳び降りたの。そしてシュリーマンも、それはギリシャ語だ! と怒鳴って殴ったわ。そして彼等は喧嘩になったのよ。それ以来、この神殿は荒れ果てているの。」 その時バトラーチェは唖然とした。そして二人はアテネに向かって出発した。その時山が燃えていた。マトゥサラは「山火事はギリシャの夏の風物詩よ」と言った。その道路は崖沿いに走っていて、ガードレールが無かった。二人は崖の底に落ちていた車を見た。そして吹き出すと、その拍子に崖から落ちた。そして二人 は枝に掴まると、互いに相手が笑ったから落ちたとか、相手が先に笑ったと罵って、互いに蹴り合い始めた。