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 アベルは雲の上に来た。その時、巨大なカエルのロボットが、雲を突き抜けて立ち上がった。それはラナ であった。アベルは「これも古代文明の技術なのか! どうやって大きさを変えるのだ!」と言った。そして天に向かって「ミカエル、ラファエル、ガブリエル。このカエルのロボットを倒せ」と叫んだ。すると空からレーザー光線が発射された。ラナはそれを避けた。それから別の方向からまたレーザー光線が発射された。マトゥサラは、ラナの操縦席で「神は古代文明が残した軍事衛星を使えるんだわ」と言った。そして「まず風船になって。それからライフルに変身して」と言った。するとラナは、風船のようにしぼむと、ライフルになった。マトゥサラはそのライフルを持つと、落ち始めた。アベルは驚いて「古代文明には、風船に質量と強度を持たせる技術があったのか」と言ったが、古代の英雄が、ドラえもんのようにポケットから沢山の大きな道具を取り出したという伝説があったので、それを事実として受け入れた。その時、大気圏外には、三つの漏斗型の物体があった。それらの漏斗にはそれぞれミカエル 、ラファエル 、ガブリエル と書かれていた。それらは古代文明が作った軍事衛星であった。マトゥサラはライフルを撃つと、漏斗達は応戦した。そしてアベルは月に向かって飛び始めた。マトゥサラは、レーザー光線が来る方向をもとに、漏斗達の軌道を計算して撃った。するとその弾丸は、ミカエルの軌道と交差し、同時にミカエルがそこに来て撃ち抜かれた。マトゥサラは再び撃った。するとその弾丸はラファエルの軌道と交差し、同時にラファエルがそこに来て撃ち抜かれた。そしてマトゥサラは、ガブリエルの遠地点高度は百三十三キロで、近地点高度は百二十一キロで、公転周期は八十七分六秒だと考えた。そして、腕時計を見てから、水平線を撃った。するとその弾丸は、海面すれすれに飛んだ後、雲を突き抜けて大気圏外に飛んで行った。その時ガブリエルと呼ばれる漏斗が水平線から現れた。すると弾丸はガブリエルを撃ち抜いた。そしてライフルは鳥の羽根に変身して、マトゥサラの背中に張り付き、そしてマトゥサラは着地した。それから翼は小さい飛行機に変身して、大きくなりながらアベルに向かって飛んで行った。アベルは振り向くと、翼を人間の腕に戻して、両腕を振った。すると竜巻が発生した。するとその飛行機は後ろを向くと、今度は小さくなりながら、アベルめがけて飛び続けた。アベルが作った竜巻は、書けと飛行機の間を通り過ぎた。アベルは「飛んで逃げようが、捕まえてやる」と言って、両腕を鳥の翼に変えて、飛行機に向かって飛び始めた。するとその飛行機はアベルの顔に当たってから、大きくなって、巨大なロボットに変形してアベルを叩き落とした。アベルは「小さくなることも出来るのか」と言いながら落ちて行った。そして彼はビルの上に着地した。その時、マトゥサラもその場所にいた。マトゥサラは「私の名前は暗号よ。その意味は『彼の死が地に洪水をもたらす』だわ。だけと私の命令で洪水を起こす事も出来るわ」と言った。そして両手を上に上げて「あなたの上に洪水を起こすわ」と言った。すると両手の上に、水の塊が現れてると渦を巻き始めた。そして空気中の水蒸気を取り込んで、環を持つ巨大な惑星のような形の、回転する球体になった。マトゥサラはその水球アベルに向けて飛ばした。その水球は、空気中から水蒸気を取り込んで大きくなりながら、飛んで行った。アベルも腕を上げた。するとその手の上で、風が渦を巻き始めて、雲で出来た、環を持つ球体が現れた。アベルもその球体を飛ばした。それらの球体はぶつかり合って、共に砕けた。それらがともに水飛沫になった時、アベルとマトゥサラは同時に水飛沫の中に飛び込んだ。アベルがマトゥサラに、風で出来た剣で斬りかかると、マトゥサラは水で出来た盾で防いで、水で出来た槍でアベルを刺そうとした。アベルは飛び退いて避けると、再び風で出来た球体を飛ばした。マトゥサラはそれを避けると、ビルから跳び降りた。するとアベルも跳び下りて、彼女を追った。マトゥサラは、マシンガンを見つけて拾うと、水球を作って爆発させた。するとその辺り一帯が、霧で真っ白になった。なぜなら霧は沢山の、細かい水滴の集まりだからである。アベルは霧の中で着地した。その時彼に向けてマシンガンが発砲された。アベルは弾が飛んで来る方向に跳んで、マシンガンを掴んだが、スイッチをオンにされた状態でぶら下げてあった。その時、大きな水球が飛んで来た。アベルは避けようとしたが、ビルの上でその水の中に取り込まれた。彼が水の中で顔を上げると、マトゥサラが跳んで来ていた。その時水がアベルを残して動き出し、マトゥサラに襲いかかって飲み込んだ。マトゥサラは水の中でもがき始めた。アベルは「ポセイドンが一番長い時間、水に入っていられる。大体一分四十五秒だ」と言った。マトゥサラはナイフを取り出して、指先を少し切ってから振り回した。それから動きを止めた。アベルは彼女が死んだと思って、店に向かって上昇し始めた。同時に水塊も上昇しはじめた。その時水がマトゥサラから離れて、アベルに襲いかかった。アベルは思わず「血は息の千二十九倍の密度がある。私はもはやこの水を動かせない。水に血を混ぜてから死んだふりをしていたんだ」と叫んだ。その水は、熱くもないのに沸騰して凍り始めた。なぜなら蒸発する時に、気化熱を奪うからである。アベルは両腕を鹿の角のように変化させて、氷を割って脱出して、風の剣でマトゥサラに斬りかかった。マトゥサラも水の剣で応戦した。そして彼女は水を集めて、沢山の三日月型の物体を作って、飛ばした。アベルも風で出来た円盤を沢山作って飛ばした。水のブーメランと、風の円盤は、互いにぶつかり合って砕けた。その時、二人の上にビルが倒れて来た。マトゥサラは跳んで逃げた。そしてビルは倒壊して、マトゥサラは煙の中に落ちた。その時誰かの腕が彼女を受け止めた。煙が晴れると、アベルが彼女を抱きかかえていた。そしてアベルの顔が近づいて来た。するとマトゥサラは彼に平手で打って、彼の腕から跳び下りて逃げた。彼女は走りながら「あの人は命の息を吹き込んで無生物に命を与えられるけど、逆に命を取る事も出来るわ。いくらイケメン相手でもそれは御免だわ」と言った。彼女は振り向くと、横に飛び退いた。するとそこに風で出来た巨大な球体が落ちて来た。すると地面が崩れて埋もれていた町 が現れた。それは古代文明の遺跡であった。マトゥサラはその地下の町に跳び下りた。その時トバルは、その地下の町で飛行機に乗り込んでいた。アベルはマトゥサラの後を追って跳び下りた。その時飛行機がアベルに向かって飛んで来た。トバルは思わず「何て高性能な飛行機なんだ」と言った。アベルは「なぜ人間が操縦出来るんだ! ダイダロスが設計図を持ち出したのか! あの飛行機はアラエルカラドリウスA-6-S型に間違いないな。あれは確か垂直尾翼に欠陥があった」と言った。そして石を拾って、垂直尾翼を狙って投げた。石が当たると、その飛行機はバラバラに分解した。アベルは走り出した。その時戦車が彼の前に現れて発砲した。しかしアベルはその弾丸を手で弾き反すと、戦車に跳びかかった。すると戦車は変形するふりをしながら飛行機に変身して飛び立つと、トバルを収容して飛んで行った。アベルはそれを見て「不可能だ! 古代文明にはどんな形状記憶があったというのだ!」と言った。その時銃を持ったマトゥサラが現れた。その銃はシェハキエル であった。アベルはシェハキエルを見ると青ざめて「よさないか! 危ない!」と叫んで、逃げ出した。マトゥサラは空を撃った。すると空が火と硫黄に変わって崩れると、地下都市に落ちて来た。アベルは重傷を負って、雲の上に横たわっていた。彼が下を見下ろしたら、大量の水が渦巻いていた。彼の傷は癒えたので、立ち上がった。その時ムーザキが、直径六点四キロの湾になってて、サントリーニ島は三日月型になっていた。アベルは「洪水は起こってない。マトゥサラはまだ生きている」と叫んだ。そして、水の上に立っている彼女を見つけた。アベルは「水は火よりも強いからなのか」と言った。マトゥサラが上を見上げると、アベルも雲の上に立っていた。アベルは両手を上に上げて、空気を集めていた。集められた空気は、圧縮されて熱くなっていた。マトゥサラは水で出来た矢を、水で出来た弓につがえた。そして彼女の周りで水が渦を巻き始めた。アベルは「あなた方の先祖は、私の名を次男につけたので、彼らを罰した。すると私の名を持つ者が殺された。その殺人者の子孫達が、地上に溢れているので、彼らを滅ぼす。私は人間のせいで、長子の権とフォイボスの称号を剥奪されて、悪魔サタンの称号を与えられた。父ゼウスは人間を大切にせよと言った。そこで私は我々は火から生まれて、人間は土から生まれたのに、なぜ我々が人間を大事にしなきゃいけないのかと言った。すると父は私を追放した。今、貴方達人間は、地上を汚している。父は人間が罪を犯すたびに悲しんでいる。そして人間を滅ぼそうとして、そのたびに涙を流して思い留まっている。私は智場に洪水を起こさせるが、あなただけは父親と共に天に住んでもいいのだ。私と共に来るがよい」と言った。するとマトゥサラは「洪水は起こさせないわ。あの人と一緒に地上に住みたいわ。来月売り出されるアイスクリームを食べたいわ」と言った。その時アベルが集めた空気は白熱して、火の玉になった。そして核融合反応を起こそうとした。アベルは両手を下に降ろして、火の玉をマトゥサラの上に動かそうとした。その時、雷がアベルを撃った。同時に「乱暴な子だ。もしお前が娘だったら、もうすこし大人しかっただろうに」という声が聞こえた。それからもう一度雷がアベルを撃ち、アベルは地上に落ちた。そして流れ星がその場所に落ちて、爆発した。そして煙が晴れた時、その場所で一人の男が赤ん坊を抱いていた。男は赤ん坊に「アベルよ。お前はこれからは、わしの娘アテナだ。素直な女神に育ってくれ」とと言った。そしてマトゥサラの方を向くと「わしがゼウスだ。息子が済まない事をしたな」と言った。マトゥサラは「そこまでしなくてもいいのに・・・。大勢の神様たちが、アベルは父親思いの良い息子だと言っていたわ」と言って、ゼウスに近づいて行った。そして「それよりアテナって・・・」と言うと、ゼウスは「わしが頭から産んだ女神らしい。人間の作家は面白い事を考えるな」と言った。マトゥサラは「本当に罪人と共に正しい人も地から拭い去るのですか。千人の正しい人が地上にいても、あなたはその人たちと一緒に地を拭い去るのですか。正しい人のために洪水を止めたりはしないのですか」と言った。するとゼウスは「もし千人の正しい人がいたなら、洪水は起こさない」と言った。バトラーチェも「おらはカエルだけど、言わせてくれないか。正しい奴が百人いたら、その百人のためにおらたちを滅ぼさないでくれるか」と言った。ゼウスは「百人の正しい人がいたなら、洪水は起こさない」と言った。そしてトバル「私はカインの末裔だが言わせて下さい。もし正しい人が五十人しかいなかったら、あなたはどうしますか」と言った。するとゼウスは「その五十人のために、地を許そう」と言った。マトゥサラはサークレットを外した。するとゼウスは「そのサークレットが無いと、お前は年老いて死ぬだろう。永遠の若さが無くなるのだ。お前が死んだ時に地も滅びるのだ」と言った。マトゥサラは「人は皆いつかは死ぬのよ。それが当たり前でしょ。私はこの人と一緒に地上に住みたいけど、一人にはなりたくないわ。この人が好きだから」と言って、サークレットをゼウスに渡した。そして「私の死によって地を滅ぼさないで。滅ぼす時はあなたの判断でやって」と言った。そしてバトラーチェに「ガラスの卵を吐き出して」と言った。するとバトラーチェは「やだい。そんな事したら、おらはただのカエルに戻っちまう」と言った。しかしマトゥサラは「人の幸せとカエルの幸せは違うわ。あなたは人と暮らしている限り、幸せにはなれないわ」と言った。バトラーチェはガラスの卵を吐き出した。マトゥサラはそれを拾ってゼウスに渡した。ゼウスはマトゥサラとトバルに「わしは地上を滅ぼしはしない。この地上には、数多くの、右も左もわきまえない人間と動物がいるのだから」と言った。そしてゼウスは天に昇った。マトゥサラはバトラーチェに声をかけたが、普通のカエルに戻っていたので、答えなかった。そして、マトゥサラが与えた豹の毛皮のコートを残して、跳ねて行った。マトゥサラは「あのカエルは好きだったわ」と言うと、トバルにしがみついて泣いた。
 翌日、マトゥサラはトバルと共にエジプトに行った。