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 その夜、ステローペがアーティミドアのホテルに来た。そしてカレンダーを手に取ると「シーザーはクィンティリス(第五の月)をジュライに変えて、アウグストゥスはセクスティリス(第六の月)をオーガストに変えたけど、ティベリウスとカリグラとクラウディウスはセプテンバー(第七の月という意味だけど九月)とオクトーバー(第八の月と言う意味だけど十月)とノーヴェンバー(第九の月と言う意味だけど十一月)の名前を変えてないな! ディッセンバー(第十の月と言う意味だけど十二月)はターミニー(最後の月)にでも変えるべきだよな! 紛らわしいじゃないか!」と言って、そのカレンダーを床に叩きつけた。そして「ぼくは女が嫌だったので、中学の時はシ分の胸をフォークで刺してたんだ。それじゃあオリオンはぼくを嫌うだろうね」と言った。するとアーティミドアは驚いて「あの人はそんな理由であなたを嫌いにならないでしょう」と叫んだ。そうだったら最低な人だわ!」と叫んで、ホテルを出て行った。そしてオリオンの家に来ると、かばんを彼に投げつけて「ステローペを嫌いになったの! あの子あなたを好きみたいよ!」と言って泣き始めた。するとオリオンが「ブザーが鳴って、俺がドアを開けた時、ステローペによく似た女が走っていくのを見たが。あいつが俺を好きだとは思えんし」と言った。するとアーティミドアは「しらを切る気なの!」と言って、彼を叩くと走り去った。アーティミドアがホテルに戻った時、ステローペは手首を切っていた。アーティミドアは、その手首の手当をすると「オリオンに会ったの? あの人はもあなたに会ってないと言ってたみたいよ」と言った。ステローペは「ぼくはブザーを押したけど、怖くなって逃げたんだ」と言った。アーティミドアは、一瞬黙った後「どうして? あの人はあんなにあなたを好きだったみたいなのに」と言った。ステローペは「あいつがぼくの体の傷を知ったら嫌いになりそうかも」と言った。アーティミドアは「あの人はそんな事ではあなたを嫌いにならないわ。明日合いに行ったらどう。男なら当たって砕けろだわ」と言った。するとステローペは「ぼくは女だけどさ、あんたは時々自分が男だって事を忘れてるだろ」と言った。するとアーティミドアは驚いて「ごめんなさい。私はあなたが異性だという事を忘れてたわ」と言った。ステローペは「変な奴だよ。あんたはなんでそんなに胸があるんだ」と呟いて笑った。