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 八月二十二日、マトゥサラとバトラーチェはラビ・ウサ に会うために、北に向かった。ラビ・ウサはマトゥサラの恩師であった。彼は人間には似ておらず、二本足で立った大兎のようであった。マトゥサラとバトラーチェはエリコに来た。二人は石版 を見た。マトゥサラは「ここが地球上で一番低い場所よ。海面より三百九十四メートル低いの」と言った。するとバトラーチェが「それじゃあ一番高い場所はどこなんだ」と言った。マトゥサラは「エヴェレスト山よ。海面より八千八百四十八メートル高いの。その山はチベットではチョモランマと呼ばれていて、ネパールではサガルマーターと呼ばれているわ」と言った。そして振り返ると、バトラーチェが「THE HIGHEST POINT ON EARTH 8848 M ABOVE SEA LEVEL(地上最高点。海抜8848メートル)」と書かれている板 に変身していた。マトゥサラは「高低差は三百四十八万六千百十二メートルね」と言った。すると板がバトラーチェに戻って「おいおい何で掛けるんだよ! 高低差は九千二百四十二メートルだろ!」と言った。マトゥサラは「あらやだ千二百四十二メートルよね」と言って笑った。そして二人は再び北へ向かった。マトゥサラはヤルデン・ワインを買った。それは値段が安くて美味であった。
 八月二十三日、マトゥサラとバトラーチェはティベリアに来た。マトゥサラは学生時代、そこに住んでいた。そして二人は学校に行った。すると大きな二本足の兎が二人を出迎えた。その兎はラビ・ウサ・アルネヴ・ハ=ガドール・ベ=イナッバー であった。その時バトラーチェが「でっかい兎だ!」と言った。するとマトゥサラがバトラーチェの頭にげんこつを食らわして「あれは人間で、私の先生よ!」と言った。ラビ・ウサは「久しぶりだな。マトゥサレン・・・、いや、今はマトゥサラだったな。その蛙はシャクジエルかね」と言った。マトゥサラは「この蛙は温泉ガエルよ。名前はバトラーチェ。メティデスはどうして爆発したのかしら。洪水は起こるのかしら」と言った。するとラビ・ウサは「天使を見た事はあるかね。洪水が起こる前に、天使が襲撃するから」と言った。マトゥサラは「天使は見た事が無いわ」と言った。ラビ・ウサは「ピンダロに会った事はあるかね。彼は今ラヴ・ヒナと呼ばれているそうだ」と言った。マトゥサラは「サラはどうしてる?」と言った。するとラビ・ウサは「彼女は日本にいるよ。日本文学をヘブライ語に訳して我らに紹介し、ヘブライ文学を日本語に訳して彼らに紹介している」と言った。マトゥサラは「サラの母親は見つかったの?」と言った。ラビ・ウサは「いや、まだ見つかってないよ」と言った。サラは彼女の同級生であった。在学中、マトゥサラはギリシャ語、スペイン語、そしてスウェーデン語の本を英語或いはヘブライ語で朗読し、サラはそれを日本語で書き取っていた。ラビ・ウサは「君はマッコートの題三章の、第九ミシュナーが好きだったな」と言った。するとマトゥサラはくすくすと笑い始めた。ラビ・ウサは早口で読んだ。
 「一つの溝を耕す者が八つの違反行為のために八つのむち打ちの刑を受ける事がありうる。もし、人が牛と驢馬を組みにして耕し、それらの牛と驢馬が共に聖別された物であり、葡萄畑で混ぜて撒かれた種を土で覆った場合、それが安息年であって、祭日であり、そして彼が祭司とナジル人の両方であり、そこが墓地であるなら・・・」
 その時マトゥサラは「やめてやめて」と叫んで、テーブルを押し倒して椅子ごとひっくり返り、笑い転げ始めた。するとラビ・ウサは「おいおいそんなに面白いかね」と言って、溜息をついた。その時、マトゥサラはまだ死にそうなほど笑っていた。
 その時、ペリシテの将軍ダゴン が、惑星破壊プロトンミサイルの発射を命じた。ダゴンの肌は青くて、髪は茶色であった。大型ミサイルが、ガザからエルサレムに向けて発射された。そのミサイルは全長六百四十八メートルであった。その時サムソンとデリラが、エルサレムのカツラ屋にいた。サムソンがモヒカンのカツラを着けた時、胸の筋肉が大きくなった。するとデリラがそのカツラを横向きに着けさせた。するとサムソンの胸がしぼんで、代わりに腕が太くなった。それからデリラは面白がって、色々なカツラを着けさせ始めた。するとサムソンの筋肉が、色々な形に膨れたりしぼんだりした。その時サムソンが自分でカツラを着けて、店の外に出た。その時大きなミサイルがそこに飛んで来た。サムソンはそのミサイルを押し返した。そしてミサイルは太陽に飛び込んだ。すると回りの人達が集まって来て「わあサイババだ」と言った。するとサムソンは「俺はサムソン。サムソン・ベ=ダンだ!」と言って、そのカツラを地面に叩きつけた。
 八月二十四日、太陽は、大きさを増していた。その時、太陽を観測していたサイモン教授が、テレビで「太陽は膨張していますが、半年で元に戻る事でしょう」と言った。するとラビ・ウサが「両極の氷が融けて、海面が上がるな」と言った。そしてマトゥサラは「古代ローマ人は、自分たちの先祖は土星から来たと信じていた」と言った。するとラビ・ウサが「それは火星からじゃなかったかね」と言った。マトゥサラは「彼らが産まれた土地は戦争で滅びた。その時大きな槍が地面に突き刺さり、その土地は火の山になって飛び散ったんだよ。おそらくプロトカルチャーがあのミサイルを開発して、ペリシテ人がそれを発掘して使ったんじゃないの」と言った。そしてマトゥサラとバトラーチェはラビ・ウサの家を出た。

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 八月二十一日、マトゥサラ とバトラーチェはガザに来た。その時、兵士達が二脚砲台を使う訓練をしていた。バトラーチェが「何だよあのガザCもどきは!?」と叫んだ。するとマトゥサラくすくす笑うと「あれは歩行砲台よ。でこぼこした土地では人型に変形して歩くの」と言った。教官が号令をかけた。すると、二脚砲台の上部が起き上がって、右胸から大砲を生やしたロボットに変形した。するとバトラーチェが「ぎゃははは偽ガザCだ!」と叫んだ。